午後の一時
穏やかな日差しに包まれた午後の一時。
シルフィスは公園のベンチに座りのんびりとした時間を楽しんでいた。
時々子供達が笑い声を上げながら通り過ぎるぐらいで周りにはあまり人もいない。
だからゆっくりと羽を伸ばすことが出来る。
ここ最近、いろいろとあったのでこうして過ごせることは事は喜ばしい。
少々思い出に浸りながら遠くをぼーっと見つめていた。
「シルフィス!」
声と同時に何かが勢いよく体に体当たりしてきた。
「うわぁっ!!」
思わず前に倒れそうになるのをぐっと我慢して体制を整える。
何事かと緊張の糸を張り巡らせ後ろを振り向くとそこにはディアーナがいた。
「・・・姫。」
突然の出現に驚き言葉を無くす。
ディアーナはそんなシルフィスの様子を見てくすくすと笑った。
そしてシルフィスに抱きついた手に力を入れてもっと密着させる。
さらにその柔らかな肌を猫のようにすりあわせ始めるのであった。
ふわっとディアーナのいい匂いが鼻をくすぐる。
だ、だめだ!
これ以上ひっついていればいくらシルフィスでも耐えられない。
シルフィスは顔を赤くして必死でディアーナをはがした。
きょとんとした目でディアーナが見つめる。
何故離されたのかわからないとばかりに。
勘弁して下さい・・・。
シルフィスはそっとため息をついた。
こうしたスキンシップは初めてというわけでもない。
ディアーナと仲良くなるにつれ手をつないだり、腕を組んだりといろいろとした。
ほんのちょっと前までは何ともなかった事なのだ。
だが最近になってシルフィスの心の変化に伴いそういうわけにはいかなくなった。
今はまだ胸の奥底にしまっているディアーナへの想い。
友達ではなく一人の女の子として意識してしまった事。
その事に気づいてからのシルフィスは今までのようにディアーナに接することが出来なくなった。
だがシルフィスの態度に不満を持ったディアーナはくるっとベンチを回り込むと目の前に来た。
そしてなんと座っているシルフィスの膝の上に腰を下ろしたのである。
「ええっ?!」
もちろん慌てたシルフィスであったがディアーナは気にかけることなくのびをする。
「ここは気持ちいいですわね。暖かいし。」
「それどころではありませんよ・・・。」
泣きそうになるのを堪えながらシルフィスは小さくつぶやいた。
現に心臓が激しく高鳴っている。
しかも頭に血が上ってきたのか冷静になれない。
だが最悪にもとどめの一撃出てしまった。
ディアーナはシルフィスの体にもたれてきたのである。
一気に理性は吹っ飛んだ。
「姫・・・。」
シルフィスは後ろからディアーナを抱きしめると小さな肩に顔を埋めた。
「きゃっ。」
ディアーナが驚いたもののシルフィスは離そうとはしない。
それどころかますます力を入れていく。
さすがにこれにはディアーナも困ったように声を上げた。
「痛いですわ、シルフィス。」
「あっ、すみません。」
そう言って謝ったが力を緩めただけであいかわらず抱きしめたまま。
「シルフィスは甘えん坊さんですのね。」
ディアーナはそうつぶやき前を向いたまま笑った。
実は頬は赤く染めていたが抱きしめられることは嬉しかったので大人しくしていたのである。
そしてそのままの状態でいつものように話をはじめた。
聞き役のシルフィスは時折相づちを打つ。
愛しい存在を腕の中に包むことが出来てシルフィスは幸せであった。
思わずいつまでもその感触を確かめてしまう。
ディアーナもすっかり力を抜いて満ち足りた気持ちでシルフィスに体を預けていた。
端から見ればとても仲の良い恋人達の姿。
それは夕刻の鐘が鳴り響くまで続いたという。
シルフィスにとって思いもかけない休息。
充実した一日であった。
あやのかおり様のサイト、とにもかくにもでキリ番を踏んで頂いた作品です。
マイナー(?)まがら、私的には初プレイで初EDの二人です。
天然なディアと、しどろもどろするシルがとってもお気に入り。(=^^=)
シルフィスって、相手をいくら異性と意識しだしても、ちっとも異性に思って
もらえないのが悲痛でかわいいですね〜♪
中途半端な中性体って、結構ツボです(笑)
かおり様、素敵なお話、ありがとうございました!